【ほとんど知られてない?】津屋崎人形や博多人形の粘土はどこで取れている?

(これは、2020年10月に私がnoteというサービスに書いた記事を加筆修正したものです。)

以前、津屋崎人形のルーツは地元で取れた土というお話をしました。

津屋崎人形のルーツを辿る旅



しかし、それは240年前のお話です。

時代とともに、福岡市から土を配達してもらうようになりました。

現在使う粘土は、福岡市七隈にある大原粘土製作所さんから、1年に1度トラックで配達してもらっています。

1袋15kgあります

年に60袋ほどの粘土を使用しています。計900kg



大原さんの粘土は、津屋崎人形のみならず博多人形や陶芸作家などにも使用されています。

大原さんは福岡県の工芸を支えている、表彰されるべき功労者です。

大原さんに粘土の工程などもしっかりと教えてもらいましたので記録したいと思います。





大原粘土製作所とは?

かつてこの地域はほとんどが農地で、粘土の産出が副業だったのだそうです。

現在、七隈は福岡大学などのマンモス大学があり、人気の住宅地となっています。

(福岡大学の工学部の地下には、いい粘土が埋まっているらしいです)



そのため土の製作所は、大原さんのところだけとなっているようです。


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土の採取方法

大原さんは七隈の住宅地の大きな土地(博多人形組合所有)から重機などを使い、粘土を採取します。

長年粘土を採取してきために、その土地の半分は大きな崖のようになっています。 

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近くで見るとかなりの崖で、圧巻でした。


地層により粘土の性質が異なるため(砂の地層もある)、見極めが大切なのだと。

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砂の地層の下に、粘土の地層があります。

この地の粘土は粒子が細かく、鉱物の含有により成形性が高いため、繊細な表現が可能になっています。



まさに、人形作りに適した土です。

土の濾過方法

採取した土を、製造所へ運び、手と機械を使い攪拌します。

さらに細かい網目のフィルターで不純物を取り除き濾過させ、大きなプールに流し入れます。

(このプールは底が見えず、なんか怖かった)

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粘土化方法

じっくり時間をかけ(数ヶ月)、プールの水底に砂がたまり、上澄みのように粘土が貯まります。

その粘土をモーターで吸い上げ、機械で座布団のような形に圧縮し空気を抜きます。

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また別の機械で棒状に成形させ、手作業で切り分けます。

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切り分けた粘土は、寝かせて水分を飛ばします。

ちょうど良い粘度になったかを手で触り確認(上の写真の丸は確認した痕跡)、
袋詰めとなります。

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粘土の難しさとは?

粘土は地層で色や性質が異なり、濾過する機械に付けるフィルターで滑らかさも異なります。

人形師や作家の好みや製作スタイルに合わせて、粘土はいくつかものバリエーションに調整してあり、粘土袋を縛るロープの色で区別してあります。

また粘土の採取の段階で、大原さんの目で地層を見極め、粘土の質を保っています。

多くはデリケートな機械を使っての工程のため、泥と水による故障で製造が止まることも多いとのこと。

年代もので、高価で希少な機械(HONDA製が多かった)のため、佐賀の嬉野から修理に来てもらうため、修理費用も高いのだそうです。

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大原さんの功績とは?

博多人形をはじめとして、福岡の人形師や作家の多くが大原さんの粘土を使っています。

各種の粘土の上には、その粘土でできた人形の素焼きが飾られていて、なんとも幻想的でした。

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大原さんの粘土は嘘みたいに安いです。

そのため、私たちを含む人形師は製作原価を低く抑えられ、利益率の高いもの作りが可能になっています。

もし、大原さんが、粘土を適正な価格にしたら、多くの人形師が大変なことになるでしょう。

そのため、大原さんは粘土作りを「ほぼボランティア」と仰っていました。


粘土だけでは生計は立てられないため、大原さんは農業と不動産で生計を立てています。

現在、跡継ぎはいないため、「辞める時は事前に伝えるねー!」と言ってくれました。


まとめ

普段使っている粘土のことを知れて楽しかったけど、この大変さに感心し、少し寂しさも残りました。

いつもの粘土のありがたみ。

人形という形を作ると、それなりに注目されることはありますが、粘土ってなかなか注目されないかもしれません。

人形を作って届けていると同時に、大原さんが掘った土を届けていることを深く自覚しました


ほんとうに滑らかで美しい粘土です

※また大原さんは、福岡や九州の人形師や陶芸作家の製作状況をよく把握されています。

どこも粘土の使用量が減ってきている。伝統工芸は今後生き残りが厳しい」と実感されていらっしゃるようです。

ものづくりのリアルな現状ですね。

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