江戸時代創業の津屋崎人形には、たびたび蛤(はまぐり)が使われた人形が昔から存在します。
蛤女房など有名な民話はあります(鶴の恩返しのハマグリバージョン)
しかし、よく由来のわからない人形もあります。
蛤のある人形はシュールなため、割と人気なのですが、よくお客さんに聞かれるのが、
「蛤って何か意味があるんですか?」ということです。
しかし、いまいちよく知りませんでした。
そこで日本における蛤の縁起について、自分なりに調べてみました。
も「ハマグリのアクセサリーを縁起物として販売したい!」や「ハマグリ漁師だが、縁起物として販売したい」という方の参考になればうれしいです。
では、調べた結果をみていきましょう。
そもそも蛤は蜃気楼を出す妖怪的なもの。
調べてみると、「蜃」というのが「蜃気楼を出す妖怪はまぐり」のこということがわかりました。
出典は鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集 です。
鳥山石燕は江戸時代の画家、浮世絵師で、少しポップな妖怪画を得意としました。
その妖怪像は水木しげるに大きな影響を与えたとされています。
これによると
史記の天官書にいはく、海旁蜃気は楼台に象ると云々。蜃とは大蛤なり。海上に気をふきて、楼閣城市のかたちをなす。これを蜃気楼と名付く。
鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集
ざっくり言うと、【歴史書には「大蛤が海に気を吹いて楼閣を作る。これが蜃気楼だ」
とあった】ということでしょうか。
そして19世紀の町人文化では、この大蛤と楼閣の蜃気楼図がめでたい文様として好まれて、絵皿やかんざしのどの工芸品のモチーフになったようです。
河村 通夫氏の「江戸絵皿絵解き事典 絵手本でわかる皿絵の世界」にも紹介されていました。
楼閣というは現在のタワーマンション、繁栄や栄華の象徴だったのでしょう。
蛤は女性を表すモチーフとしても有名
春画にも蛤の関係はたくさん出てきます(「蛤 春画」で検索してみてください笑)、割と一般的な女性を表すモチーフとして利用されていたのでしょう。
昔の博多人形にも同様のモチーフがあり、ヤフオクで取引された人形が津屋崎人形に類似していました。
蛤の縁起まとめ
以上のことより、
- 蜃気楼を出す妖怪として縁起がよかった
- 女性を表すモチーフ(暗喩)として人気があった
以上の2点が、割と蛤の知られざる歴史と言えると思います。
つまり、蛤には昔の男の夢とロマンが詰まっていたわけですね。
何だか意外な結末ですが、また一つ謎が解けた感じです。