絵付け体験からみる子供の創造性の伸ばし方【クリエイティブ】

「子供の創造性を伸ばしたい!けど子供はすぐにやる気をなくしてしまう」

「クリエイティブに育ってほしい!けど何をしたらいいの?」

そのような子育ての悩みを持つ人も多いです。

私も自分自身の創造性を伸ばすために日夜努力しております。笑

さて筑前津屋崎人形巧房では、津屋崎人形モマ笛絵付け体験というのを実施しています。

モマ笛というフクロウの人形に、自由に絵付けをしてもらうというワークショップです。

モマ笛(大)

イベントなどにも出店し、コロナ前は年間数500人ほどに絵付け体験をしていただきました。

いままで累計3000人以上の方々に体験いただいたかと思います。

体験者の70%くらいはお子様(小学生〜中学生)なのですが、絵付け体験での子供たちの行動はさまざまです。

特に行動の違いがあるな〜と感じるのは、絵付けが思うようにうまくいかない時の反応です。

数千人の子供たちをみてきて、子供たちの反応は大きく分けて2つに分かれることに気がつきました。

 

 

うまくいかないときの子供たちの反応

①泣き出す、怒る、投げ出す、親に渡す。

②じっくりと絵付けに向き合い、ミスの修正や失敗をも絵付けに活かし、自分なりに納得のいく作品を作る。

 

「この2つの反応の違いは何が原因だろう?」「わたしは子供たちにどのように声をかけたらいいだろう?」と考えたのが今回の記事のきっかけです。

あくまで主観ベースですが、子育てや才能、創造性に関する本なども読んで、科学的な根拠も調べました

自分の子供に、「粘り強く物ごとに取り組んでほしい!」「努力して才能や創造性を伸ばしてほしい!」と考えている親御さんや、教育の立場にいる方に少しでも参考にしていただければと思っています。

 

子供の創造性には大差がない

絵付け体験にくる子供たちは、人形に絵付けしたことがありません。

画用紙などの平面に絵を描くのと違い、立体は絵の具が垂れたり、いつの間にか指についた絵の具が他のとこに付いたりと、思うように行きません。

そして、わたしから見ても小学生低学年くらいだと、クリエイティブな能力には大差がありません。

米国心理学者のピーター・グレイ氏もこのように言っています。

「創造性を教えることはできない。できるのは開花させることだけだ」

しかし小学生低学年くらいでも、クリエイティブに粘り強く取り組む子と、すぐ投げ出す子がいます

この違いはどこから生まれるのでしょうか?

 


製作活動中の子供たちに対する反応

絵付け体験をしている子供たちへの、親御さんの反応はさまざまです。

ケース1「絵の具がはみ出てる!」と、筆をとりあげ、子供が塗った上から修正する。

ケース2「もっと丁寧に塗りなさいよ〜」と叱る。

ケース3「上手〜!」とだけ褒める。

ケース4「一生懸命塗ったね」「ここをこういう風に頑張ったんだね」と子供の色使いや工夫を褒める。

代表的な反応はこんな感じです。

子供を相手にしているとよく使う納得のフレーズかと思います。

このとき、子供たちの反応はどのようになるでしょうか?

 

クリエイティブな子供になる言葉

ケース1「絵の具がはみ出てる!」と、筆をとりあげ、子供が塗った上から修正する。
子供はあきらかにやる気をなくし、悲しそうな顔をします。できあがった人形にも特に愛着を感じていない様子です。

親がちょっとの修正やアクセントを書き足すのは、親子の合作となり、とても楽しそうなのですが、上からガッツリと塗り直すのは、明らかにモチベーションを下げています

私からも「親子で一緒に作品作りをするのはいいのですが、書き直さないであげてください〜」とやんわり伝えたりしています笑


ケース2「もっと丁寧に塗りなさいよ!」と叱る。
子供は萎縮します。子供らしい大胆な色使いや、伸び伸びした絵付けをしない傾向になります。

絵付けに慣れていない小学生が立体物に筆で絵の具を塗る場合、精巧な色塗りは難しいです。

しかし、のびのびと現代アートのように絵付けをしていく作品は、かわいさと驚きに満ちています。

ピカソの名言に「子どものように描くには一生かかった」「子どもは誰でも芸術家だ」という言葉があります。


これを叱ってしまうと、急に萎縮したムードになります。

遊びがなくなるといいますか、急に大人びた絵付けになったり、見本どおりに作ろうとしたり。

私は「もったいないな〜」と感じています。

※ただし、親御さんが一緒に体験している場合、親御さんも自分の作品に必死だったり、難しさを共有しているためか、このような発言は少ないです。笑

親御さんの「丁寧に塗らないともったいない」という気持ちも、もちろん理解できます。

しかしそれ以上に「楽しんで塗らないともったいない」と思います。

わたしは絵付け体験の最初に「うまく塗ることより、楽しんで塗ることを大事にしてください〜」とお伝えするようにしています。


ケース3「上手〜!」とだけ褒める。
ちょっと失敗したりうまくいかない場合に、怒ったり泣き出す子は、実はこのケースが1番多いです。

「ほめてのばす」は定番ですし、本当に「上手!」と思うこともありますよね。

しかし、うまくいっている時はいいのですが、ちょっと絵の具がはみ出たり失敗をしたら、困ったことになります

さっきまで上機嫌で絵付けをしていたのに、急に感情的になっている場合があります。

親御さんは「上手に塗れているよ〜」と慰めるのですが、子供はなかなか立ち直りません。

おそらく、普段から「上手〜」と褒められているため、自分から見て「これは上手じゃない!」と思った瞬間に、悔しさや悲しさに押しつぶされてしまうのだと思います。

そうなると、いくら親御さんが単調に「いやいや上手だよ~」と慰めても、お子さんはすでに自分の理想との距離を客観的にみて、悔しくなっています

悔しさを持つことは大事ですが、「あとはママが塗って〜!」と親に絵付けを託して、自分は違うことで遊んだりと、実は粘り強さがないケースです。

「絵が上手」や「頭がいい」がアイデンティティだと、それが否定された途端やる気を失うの大人も同様です。

特に子供だと、「努力して成長した体験」が極端に少ないため、「がんばってやり切ろう!」とはならないのでしょう。

わたしは「ちょっと絵具がはみだしちゃったけど、色をたくさん使ってかわいく塗れているよ、白の絵具で修正してみたりして、あとちょっとがんばろう!」などと声をかけています。


ケース4「一生懸命塗ったね」や「ここをこういう風に頑張ったんだね」と子供の色使いや工夫を褒める
1番粘り強い子が多いケースです。子供らしい絵付けや大胆さも兼ね備えながら、集中力も持続する場合が多いです。

もちろん、そのような子供だから、親は具体的に褒めることができるのだとは思います。

しかし、普段からプロセスや工夫、忍耐を褒める声がけができているから、子供も安心して没頭できているんだろうな〜いう印象があります。

また「努力して成長した体験」を親が与えているためか、嬉しそうに「がんばった!」と言える子が多いです。

わたしもこのような声掛けを意識していますが、こどもたちの達成感のある笑顔は、こちらまで嬉しくなります。


コロナ禍前は学校で出張授業なども行っていました

クリエイティブさを伸ばす科学的な根拠

本を読んでいて、「こ、これは!」という文章を紹介いたします。
スタンフォード大学心理学教授。パーソナリティ、社会心理学、発達心理学における世界的な権威であるドゥエック博士の著書『マインドセット:「やればできる!」の研究』です。

この中に興味深い実験があります。

ほめ方で子供は変わるかを検証

ドゥエック博士は、1998年に小学5年生500人に実験を行いました。

まず生徒たちに単純な問題を解かせました。

そのあとそれぞれの生徒に点数をつけて、一言ちょっとしたほめ言葉をかけます。

 ・半分の生徒には知能をほめる「頭がいいのね」。

 ・残りの半分の生徒は努力をほめる「ほんとうによくがんばったのね!」

褒め方でねばり強さに違いが出だ

声をかけられた後、生徒たちは難易度の高いテストか低いテストを受ける選択肢を与えられます。

 ・知能をほめられた生徒→66%が簡単なテストを選ぶ

 ・努力をほめられた生徒→90%が難しいテストを選んだ

また難しいテストは失敗を前提として作られた難しい問題でしたが、生徒の反応は

 ・知能をほめられた生徒→失敗を「知能がない証拠」ととらえ自信を無くした

  ・努力をほめられた生徒→テストを長い時間取り組み、問題を楽しみ、少しも自信も失わない

最後に、最初と同じレベルの単純な問題を解かせます。

 ・ 知能をほめられた生徒→点数が20%低下

 ・努力をほめられた生徒→点数が30%増加

こういった違いすべてが、最初のテストのあとにかけられたわずかな言葉の違いに左右されたのです。

ドゥエック博士は、この結果に驚き、国内の場所を変え、異なる人種的背景の生徒で実験を三度繰り返しました。

三回とも結果はまるで同じだったそうです。

博士はこう結論づけました。

「子どもの知性をほめることは意欲をそこない、成績をそこなう」

マインドセット:「やればできる!」の研究

知能だけでなく、博士は本の中で一貫して以下のような主張をしています。

  • 賞賛すべきは努力である。才能ではない。
  • 能力が努力によって変えられることを教えるべきである。
  • 挑戦はこわいものではなく、学習のチャンスであるととらえるべきである。
  • 失敗は罪ではなく、成長のプロセスと考えるべきである。

親が努力よりも才能や成果をほめると、子供は粘り強く物事に取り組まない」ということになりますね。

【まとめ】クリエイティブに育てるには、過程を褒めてあげてください

また博士は、「結果を無視するのではなく、結果と努力を結び付けてあげることが重要」とも述べています。

がんばったから、結果がでた!」という成功体験をさせてあげるということですね。

絵付け体験は完成品がすぐに結果として残ります

テスト勉強よりも結果と努力を結びつけやすいはずです。

「絵付けを頑張ったから、こんなかわいいモマ笛ができた!」

「絵付けで工夫したから、かっこいいモマ笛ができたよ!」

こういったクリエイティブな成功をこどもたちに体験してもらう。

それが、子供の才能や創造性の伸ばすことにつながるのではと思っています。

お子様をほめるときは「がんばったから、結果がでた」ということに気づく手伝いをしてあげる。

これが僕が心がけていることです、よかったら参考にされてください。

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