【伝統工芸の値段は安すぎ?】どのような根拠で値上げする?価格を算定する?【解説】

なにごとも商売というのは「対価を得る行為」であり、自営業とは「自分で対価を決める」ことが重要になってきます。

商売を始める段階でしたら「同業者と比べ、価格の高低を決める」という戦略が取れます。

しかし、100年以上続く伝統工芸などの場合、「価格が時代とあっていない」という事態が起こります。

そのような事態の中で、どのように価格を考えたら良いのでしょうか?

僕なりの考え方を書いてみましたので、参考になったら嬉しいです。

値段は画竜点睛

「価格をつける」ということは、ものづくりの最終仕上げみたいなもので、

  • ①ものを作る
  • ②値段を付ける
  • ③お客様の前に出す

①②③の段階を経てやっと、「ものづくりでご飯を食べるための土俵」に上がることができます。

現代では③はお取り扱い店やインターネットの力を頼ることも多くなりました。

そのため、実質的にもの作りの仕上げは、②値段を付けるになります。

値段は大きな課題

そして、この②値段をつける」を疎かにしている人の多いこと多いこと

津屋崎人形もそうでしたが、もの作りは高尚な職人の世界、しかしその価格を考えることは汚いお金の世界。
そのような謎の壁があることが、伝統工芸やものづくりの衰退に繋がっているような気がしています。


今後のものづくりには、「適正な値段を付ける」ことが必要不可欠です。
今回はこの「伝統工芸のプライシング」のようなことを考えてみたいと思います。

私は前職が公務員で、業務を発注するための費用の積算(人数や日数で予算を見積もる)や、国有資産の貸付けをするための適正価格の算定を行なっていました。
税金を使うのですから、算定するにはガチガチにルールが決められていました。
積算の根拠となる数字は毎年変動し、根拠が不十分だったりすると会計検査院に怒られます。

その経験が、現在の仕事に大きな影響を与えています。

感性ではなく、根拠を探す、理屈っぽい人形師の誕生です。

値段を付ける状況は2つある

価格を考える状況は2つあります。

  • ①既存の作品シリーズの価格を見直す
  • ②新規の作品に価格を付ける


今回は①価格の見直しを考えます。

②は既存の作品と比べ、手間や材料費を考えることで計算することができるため、①ができていれば問題はありません。


伝統工芸と言われるには要件として、ものづくりの100年以上の継続を必要とします。


100年とは言わないまでも、70年間での物価変動は以下のようになります。

物価目線で考えると?

グラフの結果をざっくりというと、1947年から現在までの70年で物価は約20倍になっています。

1947年に作っていた作品の価格は、現在は20倍になっていないといけません。

戦後1万円で販売していたものは現在20万円、1000円で販売していたものは現在2万円で取引されていないと、実質的には値下げをしたことになります。
(あらゆる費用も20倍になっているため)

しかし、消費者物価指数は、商品ジャンルによっては海外の影響も大きく、全ての商品が等しく20倍になっているとは言えません。


(例えば「卵」は戦後からほとんど価格が変動していない)

では、違う切り口からも見てみましょう。

お給料目線で考えると?

そこで、商品の値段=給料となる職人にとっては、「公務員の大卒初任給」の変化というのもので考えることが重要だと思います。

なぜなら「公務員の大卒初任給」=「少なくとも成人1人が1ヶ月生活できる価値」と考えることができるからです。



調べてみると1949年の大卒国家公務員の初任給は、4223円です
(出典:人事院「国家公務員の初任給の変遷」)
2021年では18万円ほどなので、約45倍ですね

なので生活費の目線でいうと戦後から作品価格は45倍になっていないとおかしいのです。

そもそも値段を上げる理由は?

会社や団体から給料をもらう場合、市場の原理が働き(安い給料では人が来ないため適正給料に落ち着く)、給料は物価の上昇とともに上がっていきます。


しかし、一個人が、製作と販売を行うような場合、そのような原理は発生しません。

個人の給料を確保するためには、市場の状況を確認し、個人で適宜値段を調整する必要があります。

現在日本銀行が目標に掲げるのは「年2%」の物価上昇率です。


達成されるかは別として、物価は上昇し続けること、それに合わせた値段上昇をさせないと、毎年売り上げが実質減っていくことになります

難しいことは抜きに考えると?

難しいこと抜きにすると、「なんかこの作品の価格、労力の割に安い気がしてきた」という時が価格の上げどきです。

毎年微妙に値上げすることは難しいと思いますが、数年に一度か、少なくとも10年に一度の価格の見直しは必要かと思います。


取扱店様などにはご迷惑をおかけしますが、作り手には、今後も絶対に必要な考え方だと思っています。

とりあえず、戦後から20~45倍になっていない商品価格は、見直しが必須です!

まとめ


値段をあげることは勇気がいります。

「価格をあげることで何か言われたらどうしょう…」「お客さんが離れていったらどうしょう…」と思うのは当然だと思います。

値上げ当事者の僕からしたら「値上げしてよかった!」と本気で思っています

2010年の雑誌ブルータス

現在はモマ笛の中1200円、小1000円ほどです


どうしても価格の算定に不安がある方は「価格の心理学」という本がおすすめです。

価格が買い手にどのような影響を与えるかを、心理学で解説してくれていますよ。

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