筑前津屋崎人形巧房では、約250年にわたり受け継がれてきた津屋崎人形の技法と型を用いて、伝統を守っています。
しかし伝統をただ守るだけではなく、新たな挑戦として、時代にとらわれないものづくりや文化発信も行っています。
ここでは、日々の製作と、工房として取り組んでいる活動について紹介します。
津屋崎人形の製作について
受け継がれてきた型と製作技法
筑前津屋崎人形巧房は江戸時代後期、1777年創業です。
この記事を書いている原田翔平で、八代目となります。
250年ほどを、一族で代々受け継がれている人形師は、全国で見ても珍しいようです。
▶ 参考 津屋崎人形師の歴史(原田家系図)
私たちは江戸時代から代々伝わる約1000種類ほどの型を使って、津屋崎人形を製作します。
この津屋崎人形は、全盛期(明治~大正期)4軒の工房がありましたが、いまは筑前津屋崎人形巧房のみが製作工房となっています。
- 昭和56年 福岡県知事指定特産民芸品 指定
- 令和7年 「津屋崎人形」 商標取得
▶ 参考 『津屋崎人形』商標登録 ― 地域の名を個人が守る、新たなかたち
この津屋崎人形の技法は、型に1つ1つ粘土を押し込んで作る製法(手押し製法)であり、人の手によって絵付けがされるため、量産工芸ではありません。
その代わり、2つとして同じものがない、アートもような「1点もの」としての特徴も兼ね備えています。
津屋崎人形(土人形)の製作工程
粘土づくり 粘土屋さんから買った土を、水と混ぜます。

▶ 参考 【ほとんど知られてない?】津屋崎人形や博多人形の粘土はどこで取れている?
そして、水分が粘土に均等にいきわたり、土人形作りに適した柔らかさになるように、手でよく練ります。
型押し 型に粘土を入れて、指で均等に5mほどの厚さに伸ばします。人形のつなぎ目となる部分に粘土を盛って、2つの型を押し合わせて、1つの人形へと圧着します。

バリ取り成型 型押しをすると「羽根つきのたい焼き」のようにバリがでるので、竹べらを使って削り落とします。全体をヘラで綺麗に整えて、水を付けた指で表面をこすり、滑らかにします。

乾燥 室内から2~3日かけて屋外に出して乾燥させます。急激に乾燥させると人形のつなぎ目にヒビが入るため、徐々に乾かします。このときは裏返したり、位置を変えたりと、人形全体が均等に乾くようにも意識します。

焼成 数年前まで薪窯(空吹き窯)を使っていましたが、いまは電気窯にて焼成しています。
急激に高温にすると、割れてしまうため、大体5時間半ほどで850度くらいまで上げます。

手彩色 胡粉や顔料、アクリル絵の具などを使って彩色します。
人間の目や猫の髭などは、硯で墨をすって、墨液にて描き入れます。
ひとつひとつ丁寧に塗ることも、津屋崎人形の特徴の一つです。

ひとつひとつの製作工程が手仕事であること
2枚型を使い、一つ一つの人形を押していくと、微妙な粘土の量の違い、合わせた2枚の型のズレ、型の摩耗等で、1つ1つの人形に差異が生まれます。
そのうえ、人形に手作業で絵付けをすることで、さらに差異が生じます。
人間でもほくろがあったり、身体的特徴があったりします。
人形でも、同じ型で作ったとしても表情が少しずつ異なります。
つまりアートような「1点もの」としての特徴も兼ね備えています。
人形は人の祈りの形
型を合わせて作っていると、手を合わせる形になります。
よく取材に来られた方が、お祈りして、人形を作っているようですね。と言われます。
確かに、すべての人形が、子どもの成長や縁起物としての意味があります。
つまり、1つ1つの人形に願いを込めて作ることは、祈祷にも近い行為です。
私たちは、人々の生活に一番近いアートを作ってきた工房です。

大量生産の人形との違い
量産工芸としての人形には、鋳込み製造という手法があります。
これは、複数の型に液状化した粘土を一気に流し込み、量産する方法です。
一度複数個の人形を作ることができ、1つ1つのコストが安くできる特徴があります。
しかし津屋崎人形では、この手法は使わず、手押し型の製法にこだわっています。
筑前津屋崎人形巧房の現在の主な活動
工房で津屋崎人形の展示・販売
筑前津屋崎人形巧房では、人形の展示および販売を行っています。
また展示用の人形をご鑑賞いただき、ご注文も承ります。
当日に在庫のある人形は、その場でご購入いただけます。
実際の製作現場を見ることができますので、ぜひお越しください。
▶︎ 参考 筑前津屋崎人形巧房の情報や歴史

在庫のある人形の一部は、公式オンラインショップでの販売も行っております。
▶ 参考 筑前津屋崎人形巧房の各リンクを紹介 / Links Page
津屋崎人形 モマ笛絵付け体験・ワークショップ
筑前津屋崎人形巧房では、人形の注文と購入だけではなく、モマ笛の絵付け体験も行っております。
子ども家族連れの方から、カップルの方、学生の旅行など、幅広い世代の方に楽しんでいただいております。
福津市津屋崎は、海が近く、夏はレジャーで賑わいます。
そして、モマ笛絵付け体験は、雨天や寒い季節の津屋崎の観光体験としても、とても喜ばれています。
実際に津屋崎人形を絵付けをしてもらうことで、手作業の難しさ、楽しさを感じてもらえたら嬉しいです。

地域・文化との関わり
「光の道」で有名になった宮地嶽神社では、昔は津屋崎人形のモマ笛が授与されていた歴史があるようです。
現在は、参道の観光案内所で当工房のモマ笛などの、津屋崎人形の販売を行っていただいております。
こちらの観光案内所の限定でモマのマグネットなどもつくっております。
よかったらご覧になってください。
また夏は津屋崎祇園山笠をはじめ、地域の山笠の人形飾りを製作しております
▶ 参考 【人形飾り】山笠はどうやってできているのか【津屋崎|上須恵|田熊|鐘崎】
2024年には、津屋崎祇園山笠復活50周年のイラストを、筑前津屋崎人形巧房の原田翔平が担当しています。


展示実績
- 2016年 東京ギフトショー アクティブクリエーターズ部門 出展
- 2018年 中川政七商店主催 商談会「大日本市」 出展
- 2024年 東京都主催 「ものづくり匠の技の祭典」出展
津屋崎人形のコラボレーション実績
- 2017年 WEEKSとのコラボ あまおうモマ笛
- 2017年 WEEKSとハイタイドストアとのコラボ ごん太100
- 2017年 コンバース東京とのコラボ 犬人形
- 2019年 コンバース東京とのコラボ コンバースごん太
- 2021年 (株)東雲堂のコラボ にわかモマ笛
- 2024年 フィンランドのデザイナー【COMPANY】とのコラボ キノコごん太
- 2024年 (株)久原本家とのコラボ あごマグネット
- 2024年 博多人形師 中村弘峰さんとのコラボ 志賀海神社の龍面
▶ 参考 志賀海神社の龍面(龍のお面)の伝統と制作秘話|筑前津屋崎人形巧房
さまざまなモマ笛を見る ▶︎津屋崎人形モマ笛とは【由来・縁起・種類】
さまざまなごん太を見る ▶︎津屋崎人形ごん太とは?|種類・歴史・謎・親戚|情報まとめ
筑前津屋崎人形巧房の対外活動
- 2016年 無印良品キャナルシティ博多 講演
- 2022年 アクロス福岡 講演
- 2024年 アクロス福岡 講演 司会担当
文化を「残す」ための取り組み
記録と発信
筑前津屋崎人形巧房では各種SNSで、最新のコラボ情報等をお伝えしております。
しかし、それだけではなく文化の記録や発信の意味もあります。
また、「津屋崎人形」の商標取得なども、情報発信と並行して行いました。
▶ 参考 『津屋崎人形』商標登録 ― 地域の名を個人が守る、新たなかたち
古い型の人形なども作ったときは、SNSやオンラインショップのメルマガで発信しています。
▶ 筑前津屋崎人形巧房のSNSをチェックする / Links Page
次世代へ伝えるために
筑前津屋崎人形巧房では、年間数百名の方に絵付け体験に参加いただいております。
また地元の中学校への出前授業や、小学校への津屋崎祇園山笠の解説授業なども参加しています。
とにかく地元の人に、自分たちの存在・活動を知ってもらうことで、郷土や文化の種をまいています。
知ってもらう、理解してもらうことが、次世代につながると考えています。

筑前津屋崎人形巧房のことを知る
工房名:筑前津屋崎人形巧房
所在地:福岡県福津市津屋崎
担当者:原田 翔平 (8代目)
「津屋崎人形」を作る福岡県知事指定の工房。
津屋崎人形に触れる
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