中田英寿さんと中村弘峰さん(人形師)の講演を聴いてきました【まとめ】

2021年の6月29日福岡市民会館にて、サッカーのレジェンドである中田英寿さんと、福岡を代表する人形師である中村弘峰(ひろみね)さんの講演がありました。

テーマは「グローバル化時代における文化発信 伝えることで育む郷土愛」です。

ものづくりや日本文化を発信する側の人には学びのある内容で、僕も勉強になりました。

講演の内容をまとめましたので、見ていただけると嬉しいです。

前半戦(2人の紹介)と後半戦(実際の講演内容)に分けています。

前半戦(2人の紹介)

中田英寿さんとは

サッカー中田英寿といえば、僕が小学生の頃のレジェンドです。


当時の日本代表の試合でも明らかに異質で、強力なフィジカルとテクニックを持ち、パススピードや判断も早いため、他のJリーガーの選手と噛み合ってない印象を受けるほどでした。

その中田さんが引退後、世界を旅し、その後は日本の文化を発信する仕事をしていることはニュースで知っていました。


若手の職人を募って漆の技術を学ばせたり、イタリアに留学させたりしていたと記憶しています。

そんな中田さんと、福岡を代表する人形師である中村弘峰さんの講演があると聴いたら、それは見に行くしかない!

ということで講演に応募すると当選し、福岡市民会館に行きました。

中村弘峰さんとは

人形師中村弘峰さんは、代々博多人形師である中村家の四代目です。

この中村家は超有名です。

福岡の人形師では、知らない人はいないでしょう。

完全に余談ですが、

僕が中村家の名前を初めて聞いたのは、6年ほど前、僕が地元のショッピングモールで干支人形の出張販売をしていた時でした。

おしゃれをしたおばあさんが、僕の販売している干支を見て、

「私が毎年買ってる中村信僑(しんきょう)さんの人形よりも高い!あっちは有名な博多人形なのに!」

と謎マウンティング?をされました。

当時の僕は人形師の世界に入って数ヶ月くらいでした。


僕が「?」って顔をしたら、「あなた中村信僑さんも知らないの?」と言われ、僕は「この業界に入ったばかりで、、すいません」と流しました。

おばあさんは、「胡散臭いわね」って顔して帰っていきました。

(ショッピングモールはこのようなお客様の他に、人形を掴んで遊びだす子ども、それを注意しない親など、、、それ以来出張販売には行ってないです笑)

つまり、そのくらい有名な博多人形師(というかその枠をはるかに超えた活躍をされている)の家系です。



3代目の信僑さんの息子さんである、4代目の弘峰さんもかなり有名です。

30代前半の若さで自治体や大企業からの製作依頼、製品パッケージデザイン等幅広くご活躍されています。

人形師から見る中村弘峰さんの凄さ

今回の講演会では、どちらかというと中村弘峰さん(以下中村さん)からお話を聴いてみたいという気持ちが強かったです。

なぜなら中村さんの作る人形は、上手さもありますが、強さがあります。



職人として仕事を始めると、技術に目が行きがちです。


しかし中村さんの人形は表面の技術だけでなく、基礎に自分の考えがあり、作風として現れ、どっしり構えています。


なので、遠くから見ても面白く(シルエット)、近くで見ても面白い(精巧さ)人形となっています。

アートな感覚と、工芸の感覚が両立しているともいえるかもしれません。


中村弘峰 人形師中村弘峰オフィシャルウェブサイト www.hiromine-nakamura.jp

「僕と数歳しか変わらない若さで、個人で面白い作風を確立し、成功している人の考えはどんなんだろう?」と、俄然興味が湧いておりました。

中田さんと中村さんの共通点

上手さの土台に強さがある、っていうのは中田英寿さんも同様です。


海外の選手をぶっ飛ばすフィジカルっていうのは、最近の日本人アスリートにやっと増えてきましたが、2000年ごろの日本にはあんまりいませんでした。

敵選手をふっとばし、ボールを前線へ運ぶ。

テクニックの土台にフィジカルがあります。

ぶれない芯があるから、迷いがないとも言い換えることができます。



僕は「今回の講演はそのようなことが共通テーマになるのでは?」みたいな予測を立てて、福岡市民会館へ向かいました。

後半へ続く。

ハーフタイム

ここまでnoteに書いておいて、半年放置していました笑

なぜなら、割と講演が中田さんメインで「もう少し中村さんに話をききたかった」という、人形師目線で、僕が不完全燃焼だったからです。笑

後日、中村さんに直接お会いし「後半戦まだ?笑」と聞かれ、その時にもいろいろお話を聞けたので、やっと後半戦へと向かいます。

後半戦(講演内容)

中村家の家訓

四代続く、中村家に代々伝わる家訓は「お粥食ってもいいもん作れ」だそうです。

言い換えると「採算度外視で、いいものを作れ!」ということでしょう。

中村家をつくった初代の言葉で、初代が海外向けにキリスト教の人形1体を型ごと海外に輸出すれば、「家が一軒たつほどのお金が入った」のだとか。

「天才で、中村家で一番稼いだ人物です」とのこと。

なんとも夢のある話です笑

「相手に、まずは自分が損をしても価値を与える」というのは、最近のビジネスでは基本として言われることですが、1世紀近くも前にこの考えができるのは驚きですね。

そのように発展された中村家の、四代目の中村弘峰さんもそのイデオロギーを受け継ぎいいものを作り続けています

中村弘峰さんの作風

「人形は人の祈りを形にしたもの」という考えを基礎に、「同世代が見て0.2秒でおもしろいと思わせる」を目標としているそうです。

中村さんの現在の作風が生まれたきっかけも聞けました。

ある日、息子さんの五月人形を作るときに「現代人にとっての桃太郎(ヒーロー)ってなんだろう?」って考えたときです。

「大谷翔平(野球選手)だな!」とひらめきました。

そこから「もしも江戸時代の人形師が現代にタイムスリップをしたら、人形に何を残して、何を捨てるかな?」から作風を確立したのだそうです。

また人形の捉え方も確立していて、「人形は、アートとデザインの分野を行き来する立場にある」とおっしゃっていました。

これは僕も同感で、そもそも人形というのは昔の人の願いを具現化したものが多いです。

「子どもの健やかな成長」や「商売繁盛」などの縁起が込められていますデザイン=問題解決)。

しかし、実際の実用性は少ないですね。

郷土玩具はおもちゃという実用性がありましたが、現在遊んでいる人はほとんど見かけないです。

現在の人形は主に観賞用の使われ方をしています(アート=問題提起)。

祈りというデザインの立場とともに生まれ、時代とともにアートの立場になってきたという話は僕も過去に書いたことがあります。

大事なことは、このアート~デザイン間に垣根が無いということです。

「人形だから」「アートじゃないから」「玩具人形だから」と固定観念を持つ必要はなく、「そもそも人形って浮動している分野ですよね」ということです。

この考え方は、芸術として「伝統のある人形はアートでしょうか?」という問いかけができることを意味しています。

郷土玩具とはなんなのか?【読み方・意味・定義・由来】

中村さんの中にこのような哲学が土台となり、作風が確立されているんだな~と思い、どんどん興味が湧きました。

こうなると人形師目線で、

  • 人形師になることにまったく抵抗がなかったのか?
  • 今後の人形師に必要だと思うことは?
  • プレッシャーを感じることはないのか?
  • 技法や材料のこと

などは、すげー直接聞きたい!と思いました。

(コロナが落ち着いたら、ご飯でも行けたら勝手に思っています笑)

中田英寿さんの活動

中田さんは29歳でサッカーを引退し、3年間世界を回っていたそうです。

そこで世界中で日本のことを聞かれるのに、「俺、日本のこと全然しらないや!」となり、日本の文化に目をむけたそうです。

日本中を回り、「文化とは、生活であり、守るのではなく作り続けられるもの」が結論となりました。

しかし、模造品や流通コストの問題で、作り続けることが困難な文化が多いと知りました。

日本酒の流通と情報を整理

中田さんは競合がいない日本酒を選び、品質管理・消費者への理解・流通の透明化を実現するための仕組みを作りました。

それが「SAKEブロックチェーン」と「Sakenomyアプリ」です。

地方で作られる日本酒の流通に情報を付加することで、世界中の人が日本酒を知り、飲む日本酒を選べる仕組みです。

「日本酒を守るのではなく、流通と情報を整理することで、地方の酒造が作り続けられるようにした」ということですね。

また「情報がないことは、価値がないのとおなじだ」ともおっしゃっていました。

この考え方は、私も日本酒でなくても必要な考えかただと思います。

津屋崎人形が指定されている県知事指定の工芸品にも課題は多く、そのことも以前記事に書いたことがあります。

【将来どうなる?】県知事指定の伝統工芸の問題・課題とは

私が今後のものづくりに必要だと思い、実践していること

ブログを書く

津屋崎人形をはじめとした情報を発信するためです。

(中田さんいわく「職人の知識は、信憑性が高く、透明性が高い」ため、重要なのだと)

HPで商品の販売店を一覧で表示

→透明性をもった販売をしたいという考えからです。

どこで何が売られているくらいは把握しようとしています。

販売期間・販売場所がない販売委託などをお断り

→事務負担(毎月の請求業務)を減らすためと、どこでなにが販売されているのか把握したいためです。

実店舗なしネット販売のみの業者もお断り

→アマゾンや楽天で簡単にものが手に入る時代だからこそ、「自分たち発信の情報」と「流通の管理」に意味があります。

過去にネット上で注文を取った後に、こちらに注文をしてくる「受注仕入れ」をする業者がいましたが、お取引を中止させていただきました。

これは業者のみノーリスクで販売ができますが、お客様を待たせるリスクや、こちらが製作を強制されるなど問題があります。

私は上記のような取り組みをしています。

ただのブランディングという考えだけでなく、買い手の利益や、作り手のモチベーション、取り扱い店の利益など、三方良しを実現を目指しています

業種によって多種多様な対策ができますが、共通するのは作り手が自発的に行動する必要が出ていることですね。

【まとめ】中田英寿さんと中村弘峰さんの話を聞いて

ここまでながながと書いてしまいましたが、

  • 発信を頑張ろう
  • 流通を把握しよう
  • 中村さんとは飲みにいきたい(インスタ経由で達成)

みたいな三行まとめになりました。

あとは、「やっぱすごい人は自分の考えをしっかり持ってるな~」ということですね。

作品でもビジネスでも、筋を通すことが人を動かす魅力?原動力?みたいなものにつながっていると最近はわかってきました。

僕も頑張ろう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA