雛人形や五月人形の保管・保存・メンテナンス方法【人形師が解説】

季節の人形(雛人形・五月人形)や干支人形などは


「どういう方法で保管したらいいですか?」

「どうメンテナンスしたら長持ちしますか?」

とよく質問されます。



そこで、人形職人の視点で、保存方法や保管場所、メンテナンスについて解説したいと思います。

また、飾りつけと片付け時期の目安は別の記事で紹介しています。

【注意】
購入時の説明書などが残っている場合は、そちらをまず参考にされてください。
また作り手が分かる際は、電話相談などしてもいいでしょう。

ここでは人形師の観点で、津屋崎人形のみならずあらゆる人形に共通するであろう手法を説明いたします。

正しい方法を実行していただくと人形も長持ちします。

結果的に子供や孫、祖先までのプレゼントになることも夢ではありません。

津屋崎人形だけでなく、人形を大事にされている様々な方々に参考にしていただけると幸いです。


では早速解説していきましょう。

手順としては、

メンテナンス

箱へ保存

適切な保管場所へ

では順番に見ていきましょう!

雛人形・五月人形のメンテナンス

人形を箱に入れて保管する前に、メンテナンスをしてあげると人形は長持ちします。

長い時間ホコリが付着し放置されていると、カビや汚れの原因となります。


適切な方法でホコリを払って上げることが大事です。

人形のメンテナンスに必要なもの

  • 新品の布手袋(滑り止めのない軍手でも可)
  • 柔らかい新品の筆(ノリなどを落とした状態)orハンディクイックルワイパーorエアーブロアー

人形のメンテナンス手順

①人形を、メンテナンスしやすいテーブルなどに出します。

人形を素手で直接触ると、皮脂でカビやシミの原因となりますのでやめましょう。

特に、年中出しっぱなしではなく、季節で飾る人形はカビに注意が必要です。

人形を扱うときは常にやわらかい手袋を装着し、顔以外の部分を触るようにしましょう。

雛人形取り扱い
なるべく顔や着物の部分をさわらないように持ちます

人形師は綿の手袋を使って人形をもって作ります。
これは、指紋や皮脂汚れが付かず、爪などで傷をつけるのを防止するためです。


②人形についているホコリを払い落す。

きれいで乾いた筆などを使い、人形の上の方から優しく撫でるようにして、ホコリを丁寧に払いましょう。

このとき、濡れた雑巾などで拭くのは絶対にやめましょう。色落ちとカビの原因になります。

またこのメンテナンスは、カラッと晴れている日やジメジメしていない場所で行う方が良いでしょう。

大きな五月人形などだと、ハンディタイプのクイックルワイパーで代用できるかと思います。

五月人形メンテナンス

小さな雛人形などだと、カメラなどを掃除するエアーブロアーなどもいいですね。

③人形の状態をチェックする

人形を四方から眺め、状態を確認します。

修繕が必要な人形の破損(割れや塗装の剥げ、道具の紛失)がありましたら、早めに作り手に相談しましょう


早めに依頼をしておけば、作り手も余裕がありますので、修復や補充も快く引き受けてくれることが多いはずです。


作り手にとっては、年間スケジュールが決まっています。
急な修繕依頼は対応が難しいです。

メールで写真などを添付し、状況を説明した後、

  • 値段はどのくらいになりそうか
  • 納品はいつになりそうか。

などを相談しましょう。




津屋崎人形のご相談は下記からどうぞ。

人形の箱への保存方法について

箱への保存については、通気性を確保しつつ衝撃を防ぐすることが大事です。

具体的には、人形を柔らかい紙や布で包み、桐箱や紙箱に入れて、隙間に新聞紙などを軽く詰めます。

紙箱や包み紙は何年も使うとボロボロになります。その際は適宜あたらしいものに交換してください。

特に包み紙に大きく塗料の色がついていると、保管時に色移りすることが増えるので注意です!

今は無印良品などで頑丈な紙箱やロール紙、マスキングテープなどが手に入ります。

ぜひ、綺麗なもので保管してあげてください。


人形を包む紙は、柔らかくて通気性が良いものがいいです。

津屋崎人形では、薄葉紙(うすようし)や純白ロール紙といわれる紙を使っています。




キッチンペーパーなどでも代用できますが、ホコリがつきやすいティッシュなどは避ける方が良いでしょう。



また保管にビニール袋やプラスチックケースを使ってしまうと、通気性がなくなりカビの原因となります、ご注意を!

高価になってしまいますが、できたら桐箱をおすすめします。

桐は空気を多く含んでいるため、湿度を一定に保ち、燃えにくいという大きなメリットがあります。

津屋崎人形桐箱
津屋崎人形の雛人形や五月人形には保管用の桐箱か紙箱をつけています

津屋崎人形では、お客様から「30年前の人形が今も現役ですが、紙箱がボロボロなので桐箱を買えますか?」と聞かれることが増えてきました。

もちろん桐箱のみの注文も承っております

またお客様から「箱に入れる防虫剤や乾燥剤は必要ですか?」

と聞かれることがありますが、

防虫剤や乾燥剤については、

  • 土人形→必要ない(ただし人形の一部に布などを使用している場合は確認)
  • その他の人形→作り手に確認

の対応でいいと思います。

絹などの繊維を使用している雛人形などは、乾燥剤や防虫剤が必要となる可能性があります。

素材によるので、作り手に確認するのが確実ですね。

雛人形・五月人形の保管場所について

保管場所は湿気が少なく、風通しが良く、日の当たらない場所にしましょう

湿気はカビや色落ちの原因となります。

日が当たりすぎると日焼けをおこし、色落ちの原因となります。



具体的には、押し入れやクローゼットのなるべく上段に、周りのスペースに余裕を持たせて収納すると良いでしょう。

すのこなど敷くことも有効です。

【まとめ】雛人形や五月人形の保管・保存・メンテナンス方法

以上が雛人形や五月人形の

メンテナンス

箱へ保存

保管場所へ

の手順でした。

適切なメンテナンス・保存・保管は、確実に人形を長持ちさせて、末長くご愛顧いただけることになります。

完璧ではなくても、手持ちの素材で7~8割を実践いただくと、人形はほんとに綺麗に保管されていきます。

たまに長年ご愛顧いただいている人形を目にすると、「ほとんど新品!だけど数十年前の祖父の作!」みたいなことがあります。

そのようなときは、タイムマシンに乗ったおじいちゃんから応援されているような感覚になります。

津屋崎人形雛人形
30年以上前の祖父作の雛人形(2017年2月撮影)



津屋崎人形だけでなく、多くの人形が職人の手によって生み出されています。

手によって生み出されたものは、手によってしか維持管理ができません。


やれる範囲でメンテナンス作業を実践していただけますと、作り手として感謝です。

神経質になる必要はありません。
雛人形や五月人形の多少の経年変化は味であり、そのご家族との歴史でもあります。

友人や家族で人形を買った人がいれば、今回の記事の情報を共有いただけたら嬉しいです。

いままで津屋崎人形を買ってくださり、長年大事にしてくださっている方たちがいるため、頑張ってものづくりを続けようと思えています。

いつもありがとうございます。

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